THE SOLE「COMPATTA」小さなバッグだからこそ、素材とつくりが分かる


バッグは大きければ収納力が増え、小さければ持ち運びやすくなる。

一見すると、それだけの話に思えます。

しかし、大人が持つバッグとなると、実は「小さいバッグ」のほうが難しい。

財布、スマートフォン、鍵、眼鏡など、必要最低限の荷物だけを入れる。

それでいて、バッグそのものがカジュアルになりすぎず、ジャケットやニット、シャツといった大人の服にも自然に馴染む。

そんな「大人のための小さなバッグ」を形にしたのが、THE SOLEの「COMPATTA」です。

現在、トリヨン・モーリス単体モデルが税込93,500円、トリヨン・モーリス×ウルトラスエードのモデルが税込71,500円で販売されています。

決して安いバッグではありません。では、なぜこれほどの価格になるのか。

その理由を理解するには、バッグのデザインだけではなく、使われている素材と、それを形にする日本のものづくりまで見ていく必要があります。


目次



COMPATTAとは?


COMPATTAは、必要最低限の荷物を持ち歩くために設計されたミニトート。

公開されているスペックでは、モデルによって多少の個体差がありますが、トリヨン・モーリスモデルはおおよそ、

  • 横幅:約27.5cm
  • 高さ:約21cm
  • マチ:約9.5cm
  • ハンドル込み高さ:約30cm

というサイズ。

スマートフォン、財布、鍵、眼鏡などをまとめるには十分。一方で、一般的なトートバッグほど大きくない。この「必要なものだけを持つ」という考え方が、COMPATTAの大きな特徴です。

さらに、内部にはジップポケットと仕切りポケットを備え、入口部分にはバッグが大きく開きすぎないようストラップも設けられています。

底には底板と底鋲を採用しているため、荷物を入れていない状態でも自立しやすい。つまり、単純に「小さくしたトート」ではありません。

小さいサイズの中に、使いやすさを成立させるためのディテールを詰め込んだバッグです。 


このバッグの魅力を決めている「素材」

COMPATTAには、大きく分けて2種類の素材が使われています。

ひとつが、トリヨン・モーリス。

そしてもうひとつが、ウルトラスエード。

この2つは、実はまったく異なる性質を持った素材です。

トリヨン・モーリスは天然皮革。一方、ウルトラスエードは東レが開発した人工皮革です。

つまりCOMPATTAは、フランスの高級天然皮革 × 日本の先端素材 という組み合わせになっています。

ここが、このバッグを面白くしているところです。



トリヨン・モーリスとは?



「トリヨン」はフランス語で、一般的には牛革のグレインレザーを指す言葉として使われます。

そして「モーリス」は、その中でも非常にきめ細かなシボと、柔らかさの中に適度なコシを持つ革として知られています。

海外の革資料でも、Taurillon Mauriceは細かく均一なグレイン、適度な光沢、しなやかさと構築性を併せ持つ革として説明されています。

THE SOLEのCOMPATTAでも、この革の特徴が非常に分かりやすく出ています。

細かなシボ。柔らかな手触り。それでいて、バッグとして形を保つだけのハリがある。

この「柔らかいのに、だらしなくならない」というバランスが重要です。

例えば、非常に柔らかい革だけで小型バッグを作ると、荷物を入れたときにバッグ全体が潰れたり、形が崩れたりすることがあります。

反対に硬い革を使えば形は出ますが、今度は持ったときの柔らかさが失われる。

トリヨン・モーリスは、その中間にあるような性格を持っている。

だからこそ、COMPATTAのような「小さくても品格を求められるバッグ」と相性が良いのです。


「トリヨン・モーリス=タンナーの名前」ではない

ここは、革好きの方にはぜひ知っておいてほしいポイントです。

「トリヨン・モーリス」という名前を聞くと、特定のタンナーが製造する革のブランド名のように感じます。

しかし、少なくとも今回確認できたTHE SOLE関連の公開情報では、「THE SOLEのトリヨン・モーリスを製造しているタンナーは○○社」というところまで公式には明らかにされていません。

各販売店では「フランスを代表する世界最高峰のタンナーが生み出すトリヨン・モーリス」と紹介されていますが、具体的なタンナー名は記載されていません。

したがって、ここで特定のタンナー名を推測して断定するのは適切ではありません。

これは逆に、革を見るうえで大切な考え方でもあります。

「どこのタンナーか」だけで革の良し悪しを判断するのではなく、革そのものの表情、厚み、鞣し、仕上げ、そして製品にしたときの完成度を見る。

THE SOLEは、まさにそういう視点で素材を選んでいるブランドです。


ちなみに「トリヨン・モーリス」が有名になった理由

この革の名前を知るうえで外せないのが、フランスのラグジュアリーバッグとの関係です。

Taurillon Mauriceは、エルメスのバッグにも使用されることで広く知られる革の一つです。

海外の革資料では、2017年に登場した比較的新しい革として紹介され、従来のクレマンス系の柔らかさを持ちながら、より細かなシボと構築的な形を出しやすい革として説明されています。 (PurseBlog)

つまり、「高級バッグに使われるから良い革」という単純な話ではなく、「柔らかさ」「シボ」「耐久性」「形を保つ力」「発色」など、バッグを作るうえで非常にバランスの良い性質を持っている。

だからこそ、高級バッグの素材として選ばれてきた、と考えると分かりやすいでしょう。



ウルトラスエードとは?

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そして、もうひとつCOMPATTAを特徴づけるのが、Ultrasuede®(ウルトラスエード)です。

こちらは天然皮革ではありません。東レが開発した人工皮革です。

しかも、単純な「合成スエード」と考えると、その技術的な凄さを見落としてしまいます。

ウルトラスエードは1970年に登場。東レが開発した極細繊維を使用し、極細繊維の束と高分子弾性体を三次元的に絡み合わせた不織布構造によって作られています。


東レによると、原料となるポリエステル極細繊維は、900km以上の長さでも重量が1g未満という非常に細い繊維です。 (ウルトラスエード)

ここは、実際の素材を手に取るとかなり面白い部分です。一見すると「スエード」。しかし、その中身は天然皮革とはまったく違う。


ウルトラスエードは「人工だけど安い素材」ではない

「人工皮革」と聞くと、本革より安価な代替素材。そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかしウルトラスエードは、その考え方とは少し違います。

東レが公開している特徴を見ると、

  • ソフトな手触り
  • 高い耐久性
  • 適度な通気性・透湿性
  • 軽量
  • 均質性
  • メンテナンス性
  • 多彩なカラーバリエーション

などを特徴としています。

つまり、「本革を安く再現するための素材」ではなく、人工素材だからこそ実現できる性能を持った高機能素材 と考えたほうが正確です。


東レが50年以上作り続ける「ウルトラスエード」

ウルトラスエードは1970年に誕生しています。つまり、50年以上の歴史を持つ素材です。

しかも現在ではファッションだけではなく、自動車内装、航空機、家具、スポーツ用品、スマートフォン関連 など、非常に幅広い分野で使われています。

東レ自身も、現在のウルトラスエードについて「Japan Quality」を掲げ、原料から製造工程まで技術を積み重ねています。

素材の製造工程も、重合 → 紡糸 → フェルト加工 → 製革 → 染色・仕上げ という複数の工程を経て完成します。 だから「スエードっぽい人工素材」という一言で片付けてしまうのは、かなりもったいない。



なぜTHE SOLEは2つの素材を組み合わせたのか?


ここがCOMPATTAの一番面白いところです。

トリヨン・モーリスとウルトラスエード。どちらも高品質な素材ですが、得意分野が違います。

トリヨン・モーリスは、革らしい存在感と構築感。ウルトラスエードは、軽さと柔らかさ、均質な表情。

この2つを組み合わせることで、「全部革」にするより軽快で、「全部ウルトラスエード」にするより存在感がある。そんなバランスを作っています。

実際、COMPATTAのウルトラスエードモデルでは、本体にウルトラスエードを使いながら、ハンドルなど要所にトリヨン・モーリスを使っています。これは単なる「異素材コンビ」ではありません。素材の性格を理解したうえで、適材適所に配置している。ここにTHE SOLEらしさがあります。


実物を見るなら「シボ」を見てほしい

COMPATTAを手に取る機会があれば、まず見てほしいのがトリヨン・モーリスのシボです。

写真では分かりにくいですが、細かな凹凸が均一に並んでいるだけではありません。

光が当たったときに、明るい部分、陰になる部分、革が膨らんで見える部分 が生まれます。

これがバッグ全体に立体感を与えます。そして、使っていくことで革の表情が変化していく。

ここは人工素材では完全に置き換えることのできない、天然皮革ならではの魅力です。


一方、ウルトラスエードは「均一であること」が魅力

天然皮革と反対に、ウルトラスエードは非常に均質です。

傷や個体差を楽しむというより、いつ触っても同じような柔らかさ。どこを見ても安定した表情。軽く、扱いやすい。 という人工素材ならではのメリットがあります。

だからこそ、天然皮革の「個体差・表情」と、ウルトラスエードの「均質性・機能性」を一つのバッグの中で共存させることができる。

これは非常に現代的な考え方だと思います。


「本革だけが最高」という考え方から少し離れてみる

服でも家具でも時計でも、「天然素材=高級」という考え方はあります。もちろん天然素材には天然素材の魅力があります。

しかし、素材にはそれぞれ得意分野があります。

COMPATTAが面白いのは、天然皮革だから良い、人工素材だから安い という単純な価値観ではないこと。

トリヨン・モーリスには、トリヨン・モーリスの良さがある。

ウルトラスエードには、ウルトラスエードの良さがある。

そして、それぞれを適切な場所に使うことで、単一素材では出せない完成度を作っている。ここに、THE SOLEのものづくりの面白さがあります。



日本の職人技術とディテールへのこだわり



どれだけ良い革を使っても、バッグとして完成させる技術がなければ意味がありません。

COMPATTAは日本製です。THE SOLEのバッグについては、日本国内の熟練した職人による手仕事が紹介されています。

特に分かりやすいのがハンドルです。ハンドルには革芯を入れ、手にしたときの柔らかさを出す。さらにコバは職人が磨き上げる。

単純に革を折って縫っただけのハンドルではありません。

THE SOLEの別モデルについても、熟練職人によるコバ磨きや、国内トップクラスの職人による手仕上げが紹介されています。

一方で、COMPATTAを実際にどのバッグ工場が製造しているのかという工場名については、今回確認できた公開情報では明確に公表されていません。

「日本製」という結果だけではなく、日本国内の熟練したバッグ職人によって仕立てられている というところまでを確認できる情報として扱うのが適切です。


なぜ小さなバッグに、ここまで手間をかけるのか?

普通に考えれば、小さいバッグは材料が少なくて済みます。大きなバッグより簡単そうに見える。

しかし、実際には逆の部分があります。

バッグが小さくなるほど、縫製のズレ、革の厚み、ハンドルの太さ、ポケットの位置、底のバランス といった細かな違いが、そのままデザインとして表面化します。

大きなバッグなら多少の誤差が目立たなくても、27cm前後のミニトートでは数mmの違いが全体の印象を変えてしまう。

だからこそ、COMPATTAのような小型バッグでは、「良い素材を使った」だけでは完成しません。

素材 × パターン × 縫製 × 仕上げ のすべてが揃って初めて成立します。


真鍮無垢の底鋲にも理由がある

COMPATTAの底を見ると、小さな底鋲が付いています。これも単なる装飾ではありません。

バッグを床やテーブルに置いたとき、革が直接接地することを防ぎます。

しかもTHE SOLEでは、ミニトートに合わせて高さを抑えた真鍮無垢の底鋲を採用しています。

大きなバッグ用の底鋲をそのまま小さくするのではなく、「このサイズのバッグには、どの高さが美しいか」まで考えている。

こういう部分は写真では伝わりにくいですが、実際に使うと分かる部分です。



なぜ高いのか?完成品としての密度

COMPATTAを見て、「トリヨン・モーリスを使っているから高い」と考えることもできます。

もちろん、それも価格を構成する大きな要素です。しかし、本質はそこだけではありません。

例えば、

フランスの高級天然皮革 → 日本の高機能素材ウルトラスエード → 日本国内での裁断・縫製 → 革芯を入れたハンドル → 職人によるコバ仕上げ → 真鍮無垢の底鋲 → 小型バッグとしての収納設計

という複数の要素が積み重なっています。

つまり価格は、「革の値段」ではなく、「完成品としての密度」で考えたほうが分かりやすい。


ESSEVEがCOMPATTAを選ぶ理由



ESSEVEがこのバッグをおすすめしたい理由も、単純に「高級だから」ではありません。

むしろ、大人が日常で本当に使えるサイズであること。 そして、素材の背景まで含めて楽しめること。 この2つが大きい。

洋服を選ぶとき、「この生地はどこのものなのか?」「なぜこの生地を使っているのか?」まで知ると、服への見方が変わります。

バッグも同じです。

トリヨン・モーリスというフランスの天然皮革。東レが50年以上開発を続けてきたウルトラスエード。そして、それらを日本の職人がバッグとして仕立てる。

COMPATTAは、小さなバッグですが、その背景にはかなり多くの技術が詰まっていたんですね。


まとめ:COMPATTAは「小さいからこそ贅沢」なバッグ

THE SOLEのCOMPATTAは、単なるミニトートではありません。

必要最低限の荷物を持つためのサイズ。トリヨン・モーリスの美しいシボ。ウルトラスエードの軽さと柔らかさ。日本国内の職人による縫製。革芯を入れたハンドル。丁寧に仕上げられたコバ。真鍮無垢の底鋲。そして、それらを一つのプロダクトとしてまとめるTHE SOLEの設計思想。

すべてを合わせて考えると、このバッグの価値が見えてきます。

「高級な素材を使った小さなバッグ」ではなく、「必要なものだけを、美しく持つために作られたバッグ」。

それがCOMPATTAなのだと思います。

大きなバッグに荷物を詰め込むのではなく、財布、スマートフォン、鍵、眼鏡。その日の必要最低限だけを持って出かける。

そんな今の大人の生活に、ちょうどいい。

そして、使うたびに素材やつくりの良さが分かってくる。

ESSEVEでは、こうした「長く使うほど良さが分かるもの」を、素材の背景まで含めて紹介していきたいと思っています。

安藤ひかる
PROFILE

安藤ひかる

セレクトショップにて7年ほどバイヤー、店長、YouTuberなどを経験し2026年に独立。
現在は名古屋でセレクトショップを運営。
「日々の衣食住を楽しみ人生を豊かにする!」をテーマに、自分の好きな事や物を発信していきます。



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