皆さん、「サファリジャケット」と聞いて、どんな一着を思い浮かべますか?
カーキ色の生地に、いくつものポケット。ウエストにベルトが付いた、どこか探検家を思わせるジャケット。そんなイメージをお持ちの方も多いかもしれません。
もちろん、それもサファリジャケットの代表的な姿です。
ただ僕は、この服の面白さは、いかにも探検服らしい見た目だけではないと思っています。
シャツのような軽快さがありながら、ジャケットらしい存在感もある。ミリタリーやワークウェアのような実用性を感じさせながら、合わせるものや生地によっては、ぐっと上品にも見せられる。
そして何より、フランネルやツイードといったドレス寄りの生地で仕立てても、きちんと成立する。この振り幅が、個人的にはすごく魅力的です。
それを今、街で楽しむための一着に。
今回は、サファリジャケットのルーツから特徴的なディテール、そしてエッセーヴでご提案したい生地や着こなしまで、少し掘り下げてお話ししてみようと思います。

サファリジャケットとは?
そもそも「サファリ」という言葉は、スワヒリ語で「旅」や「遠征」を意味します。さらにさかのぼると、アラビア語の「safar(旅)」に由来するとされています。
現在では野生動物を観察する旅行などを指すことも多い言葉ですが、かつて欧米の人々にとってのサファリは、アフリカでの探検や狩猟旅行とも深く結びついていました。
その旅のために用いられた実用的な上着が、サファリジャケットです。「ブッシュジャケット」と呼ばれることもあります。
一般的には、開放感のあるシャツ型の襟、胸と腰に配された4つのポケット、軽く丈夫な生地などが特徴。伝統的なデザインでは、ウエストベルトや肩章が付くものもよく見られます。いうものでもありません。時代とともに用途も変わり、デザインにもさまざまな解釈が生まれてきました。
僕としては、特徴的なポケット配置や襟元の雰囲気を生かしながら、現代の街着として少しすっきり仕上げたものが、今は取り入れやすいと思います。
サファリジャケットの歴史とルーツ
19世紀|原型をたどると、英国軍の熱帯地向け軍装へ
サファリジャケットの起源を一人のデザイナーや、一つの年に特定することは簡単ではありません。ただ、その原型を考えるうえで欠かせないのが、19世紀の英国軍が暑い地域で着用した軍服です。
特に重要なのが、カーキ色の制服。1840年代には、英国の支配下にあったインドで、目立ちやすい鮮やかな軍服に代わり、土や埃に近い色の衣服が使われ始めていました。
目立ちにくい色であること。そして、暑さの中でも動きやすいこと。後のサファリジャケットにつながる考え方は、見た目の装飾ではなく、実用上の必要性から育っていったわけです。
19世紀末から20世紀初頭、特に1899〜1902年の第二次ボーア戦争期には、南アフリカで活動する英国軍のカーキ色のドリル地の軍装に、複数の大きなポケットやベルト、肩章など、後のサファリジャケットと共通する要素が見られます。
ここで大切なのは、最初からファッションとして生み出されたものではなかったということ。植民地時代の軍装を背景に、現地での活動に求められる機能が、そのデザインを形作っていきました。
20世紀初頭|軍服から、探検家や旅行者の装いへ
やがて、こうした機能的な上着は軍隊だけのものではなくなります。
20世紀初頭、アフリカへ探検や狩猟に向かう欧米の旅行者たちの間でも、サファリスタイルが広がっていきました。
例えば、アメリカの元大統領セオドア・ルーズベルトは、1909〜1910年にアフリカを訪れています。後には作家アーネスト・ヘミングウェイも、サファリルックを象徴する人物の一人として知られるようになりました。
当時の旅では、ポケットに必要なものを収められること、動きやすいこと、暑い環境でも着やすいことが大切でした。胸と腰に配されたポケットや、比較的軽量なコットン地などは、そのための合理的な仕様だったのでしょう。
今ではデザインとして楽しまれているディテールにも、きちんと理由がある。この背景を知ると、服の見え方も少し変わってきますよね。
1960年代|イヴ・サンローランが、ファッションへと昇華
そして、サファリジャケットを語るうえで外せないのが、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)の存在です。
サンローランは1967年のコレクションで、サファリジャケットを発表。翌1968年には、フランス版『Vogue』のために制作されたサファリジャケットが大きな注目を集めました。
フランス語で「サハリエンヌ(Saharienne)」とも呼ばれるこの服は、従来の男性的な軍装や探検服の要素を、女性のファッションに大胆に取り入れたものでした。1969年にはプレタポルテでも展開されています。

実用服として生まれたデザインが、洗練されたモードの一着へ。ここに、サファリジャケットの大きな転換点があったのだと思います。
その後も映画やさまざまなブランドの提案を通じて受け継がれ、今日ではコットンだけでなく、ウールやツイードなど、多彩な素材で楽しめる服になりました。
知っておきたい代表的なディテール
ここからは、サファリジャケットをサファリジャケットたらしめる、代表的なディテールについて。
今回は、エッセーヴでご提案するベルトのない、4ポケット仕様を基本に見ていきたいと思います。
胸と腰に並ぶ、4つのフラップポケット
サファリジャケットと聞いて、まず目を引くのがこのポケットではないでしょうか。
左右の胸に2つ、腰に2つ。合計4つのポケットを配置したデザインは、サファリジャケットを象徴する要素の一つです。
もともとは旅や野外活動の道具を持ち運ぶための機能的な仕様。雨や埃などから中身を守るために、フラップ(蓋)が付けられています。
伝統的なものには、収納量を増やすためにプリーツやマチを設けたポケットもあります。一方、街着として考えるなら、写真のような比較的すっきりしたフラップポケットもおすすめです。
ポケットの存在感は残しつつ、野暮ったくなりすぎない。僕はこのバランスが結構大事だと思っています。
シャツのように開く、軽快な襟元
一般的なテーラードジャケットとはまた違った、シャツを思わせる襟元も魅力です。
開放的な襟の形が、サファリジャケット特有のリラックスした雰囲気を作ります。首元に抜け感があるので、カットソーやニットを合わせても自然ですし、シャツを着ても必要以上に堅苦しくなりません。

素材を変えると、印象はここまで変わる
サファリジャケットといえば、やはりコットン。カーキやベージュのイメージが強いかもしれません。
それは歴史を考えても自然なことですし、今も間違いなく魅力的です。
でも、エッセーヴで仕立てるなら、僕はぜひ生地を変えることで生まれる表情の違いも楽しんでほしいと思っています。
01|コットン — 王道の軽快さと、着込む楽しみ

まずは、サファリジャケットらしさを素直に楽しめるコットン。
ギャバジンやツイルなど、適度にハリのある生地を選べば、ポケットの形やジャケットらしい輪郭がきれいに出ます。
ベージュやオリーブといった定番色はもちろん、ネイビーなどを選べば都会的な印象にも。コットン特有の自然なシワや経年変化も、味として楽しめると思います。
02|フランネル — 柔らかな表情で、ぐっと上品に

個人的に、かなりおすすめしたいのがフランネルです。
本来は野外で使われていたサファリジャケットに、ウールならではの柔らかな風合いや上品さが加わる。すると同じ4ポケットのデザインでも、雰囲気が大きく変わります。
ネイビーやチャコールグレーなどで仕立てれば、きれいなウールトラウザーズとも自然につながる。僕としては、ドレススタイルがお好きな方にも取り入れていただきたい組み合わせです。
03|ツイード — 素材の表情を、主役にする

もう一つ、ぜひ候補に入れていただきたいのがツイード。
ざっくりとした織りや、複数の色が混ざり合った奥行きのある表情。もともと屋外での着用とも縁が深いツイードは、サファリジャケットのルーツとも相性の良い素材だと思います。
ブラウンやグリーン系のツイードなら、4つのポケットが程よいアクセントに。テーラードのツイードジャケットとはひと味違う、肩の力が抜けた大人の一着になるはずです。
大人におすすめしたい3つの着こなし
ここからは、僕が提案したいサファリジャケットの着こなしを3つご紹介します。
ポイントは、サファリジャケットそのものを必要以上に主張させないこと。4つのポケットという十分な個性があるので、ほかのアイテムは少し落ち着かせるくらいが、ちょうど良いと思います。
ネイビーフランネルで、上品なジャケットスタイル
まずは、サファリジャケットを少しドレス寄りに楽しむスタイル。
ネイビーのフランネルに、グレーのスラックス。色合わせ自体はとてもシンプルですが、テーラードジャケットではなくサファリジャケットにすることで、少し新鮮な雰囲気が生まれます。
中には薄手のタートルネックを合わせて、あくまで上品に。ジャケットほど堅くならず、かといってブルゾンほどラフでもない。そんなバランスが魅力です。
ツイードで、素材を楽しむ休日スタイル
こちらは、ツイードの素材感を主役にしたスタイルです。
ツイードというと、どうしてもクラシックなテーラードジャケットを連想しがちですが、サファリジャケットに置き換えると、また違った楽しみ方ができます。
ブラウン系のツイードに明るい色のパンツを合わせることで、重たくなりすぎず、自然な軽さも出せる。シャツやネクタイを使わなくても、素材の良さだけで十分に雰囲気のある装いになると思います。
コットン素材で、軽快な大人のカジュアルスタイル
最後は、サファリジャケットのルーツを感じられるコットンで。
オリーブやベージュのコットン地なら、デニムやチノパンなど、普段のカジュアルなパンツともよく合います。
ただ、僕なら少しだけきれいにまとめたい。例えばシャツを合わせ、足元にはレザーシューズを。そうすることで、服自体が持つ男らしさはそのままに、街で着る大人のカジュアルとして自然に馴染むと思います。
気負わず羽織れるのに、普通のシャツやブルゾンとは少し違う。そんな一着があると、休日の服選びも楽しくなりますよね。

ESSEVEが提案するサファリジャケット
サファリジャケットらしい存在感はありながら、過剰に武骨になりすぎない。だからこそ、コットンだけでなく、フランネルやツイードといった素材でも楽しんでいただけると思っています。
同じデザインでも、選ぶ生地によって仕上がりの雰囲気は大きく変わります。軽快な休日の一着にするのか、それともウールトラウザーズに合わせる上品な一着にするのか。
まずは「どう着たいか」を考えてみる。そこから生地を選んでいくのも、オーダーならではの面白さです。
個人的には、普段テーラードジャケットをよく着る方にこそ、ぜひ一度検討していただきたいですね。
歴史を知って、今らしく着る
サファリジャケットは、もともと人々が暑い地域で活動するために工夫した実用服から発展してきた一着です。
軍装や探検服としての歴史を持ち、20世紀にはファッションとしても注目されるようになった。そう考えると、4つのポケットや独特な襟元にも、単なるデザイン以上の面白さを感じます。
ただし、歴史に忠実であることだけが、服を楽しむ方法ではないと思います。
自分の生活や好みに合わせて少しずつ変えていくことも、服の楽しさではないでしょうか。
サファリジャケットは、そんな楽しみ方ができる一着です。
皆さんなら、どんな生地で仕立ててみたいですか?
ESSEVE PERSONAL TAILOR-MADE
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コートの生地やシルエット、細かなディテールまで。着用シーンやお好みを伺いながら、理想の一着づくりをお手伝いします。